『一生忘れられない昇段審査でした。』
あれは二月八日午後八時頃、突然鳴った携帯電話の着信から始まりました。画面を見ると、「高見総師だ・・・。」(緊張)
総師:「おー南條君か元気にしてるかぁ 奥さんも元気かぁ。」
南條:「押忍、元気でやっております.」
総師:「そうかぁ良かったぁ。昇段も考えてくれよなぁ。」
南條:「押忍。そう言って頂けるのでありましたら前向きに考えます。」
総師:「そうかぁ奥さんに宜しく言っといてくよなぁ。」 プープープー
電話を切って妻にこの事を話すと「あんたみたいな人にこんなに言ってくれることなんか、中々ないよ。昇段考えないかんのやないん。幸せな事やと思うよ。」
そこで昇段の決意が固まりました。「そうやね、審査受けさせて頂こう。」そう話したことを覚えています。
そして次の日、高見最高範士にご連絡し受審させて頂ける許可を頂戴しました。しかし、審査は四月十五日、後二ヶ月しかありません。三年間コロナ禍の影響で全ての行事に出席していなかった私はその間に変わっている基本・移動稽古すら理解されておらず、ましてや四段位の型、スーパーリンペイ・風神(棒の型)など解る訳もなく、以前頂いていた動画で稽古する毎日が続きました。
ある時は一人っきりの道場で、またある時は近所の早朝の公園で棒を振り回す変な親父がいると思われていたかもしれません。
しかし、あっという間に審査一週間前(四月九日)の帯研の日が来ました。
案の定スーパーリンペイは間違って覚えている箇所が多くあり、風神に至っては高見最高範士にご確認頂く時間もありません。
もう不安は極限状態です。審査まで残すところ五日しかなく焦った私は最高範士に見ていただくしかないと思い、藁をも掴む思いで連絡を取りました。
そこで私は最高範士から衝撃の言葉を聞かされます。「南條師範、それでは当日の審査の前に見させて貰います。実は私(最高範士)も風神は教えて貰った訳じゃなく見て覚えたんです。」そう言われた瞬間、私はなんて自分がズル賢くて卑怯で弱い人間なんだ。自分が努力していないことをあたかも師匠にまで責任転嫁していたのかと恥ずかしくなりました。
最高範士は私に人としての未熟さを教えたかったのではないかと理解せざるを得ませんでした。
それからは間違いを恐れず自分を信じて稽古も審査も頼ることなく、持てる力全てをさらけ出して臨もうと決意しました。
今回の昇段審査で最高範士の目に私がどのように映ったのかは解りませんが、受審させて頂いて空手からまた一つ徳を得たと思い大変感謝しております。
最後に、いつも温かく私達を見守って頂ける高見総師、高見事務長、自然体で且つ細やかなご指導を頂ける高見最高範士、今回の昇段審査では大変ご尽力頂いた平松師範、廣子師範、そして一緒に稽古してくれた今治道場の道場生に深く感謝申し上げます。
今後は段位に恥じない人になるべく日々稽古して参ります。
有難う御座いました。押忍