この度は昇段の許可を頂いた高見成昭総師、高見彰最高範士に心より感謝申し上げます。
16年程前、私は「うつ」になりました。自分の弱さを認めず「自分は大丈夫」そんな慢心が受診を遅らせ症状を悪化させた事は間違いありません。3人の子供達の笑顔を見るたびに「強くなりたい」そう願い続けてきました。心の奥底から沸いてくる不安を解消するため、自分の中の小さな「出来た」を積み重ねて自信をつける作業を続けていく中、末娘が一緒に習いに行ってもいいよ、と言ってくれた事で46歳にして憧れの空手を決意しました。
いざ入門!中里師範、黒帯の先輩方、先輩道場生の気迫、キレキレの動き、そして何より皆さんの優しさに魅了され、すっかり空手の虜になりました。心と身体を鍛えたいと願っていた私にとって空手は最高でした。
「なるべく稽古を休まず続ける」それだけを目標に毎回「出来んなぁ」と思いつつも帰りの車中「仕事も無事に終わり、稽古にも行けた」それだけでも小さな自信に繋がっていきました。
中里師範、先輩方、道場生、保護者の皆様にも支えられて稽古を続けることができ、熱心な御指導のお陰で少しずつ出来ることも増え、体力もついてきている実感がありました。家事、子育て、仕事、義父の介護、長く続けてきた和太鼓サークルの活動、どれにも空手の稽古が私を後押ししてくれました。
コロナ禍で稽古が出来ない時期がありながらも、ある日、中里師範から昇段についてのお話をいただきました。私にはずっと先の事だと思っていたので驚きましたが、覚悟を決めて稽古するしかないと思った頃、再度コロナによる稽古の中断。「今年はもういいかな…」とコロナ禍を言い訳に逃げるような気持ちになっていた時、突然、私にとってかけがえのないたった1人の姉が急逝してしまいました。
高齢の母と2人、姉の死を受け止めきれない中、家族や親戚、友人知人の助けを借り、残された者としての務めだけは何とか目処が立ちましたが、心が追いつきません。とにかく今自分に出来ることを精一杯やらないと姉に申し訳ないし、母にも心配をかけてしまうと思いました。
中里師範に稽古の再開をお願いしたところ、私の都合がつく形でいつでもどこでも稽古をつけてくださると、涙が出る程有難いお返事を頂いて、住吉道場で稽古を再開。中里師範からの温かい御指導とお言葉は一生私の心に残る事と思います。
住吉道場の先輩方にも御指導して頂きました。そして宇和道場も無事に稽古が再開。本当に短期間であったにも関わらず、的確な御指導のお陰で昇段審査に臨むことが出来ました。審査本番の数日前までは不安と緊張ばかりでしたが、審査の前日「ちょうど2ヶ月前には泣きながら喪主をやっていたんだ」そう考えると、この短期間で審査を受ける事ができるよう私を支えて下さった多くの方々への感謝の想いが溢れて不思議と緊張も軽減しました。
審査当日、普段の稽古と同様に「出来んなぁ」と感じつつも、一緒に受審された福本先輩の力強い型や護身術を拝見して「カッコいい」と感動したり、組手で初めて久枝師範代に相手をしていただく機会に恵まれたり、何より、最高範士の直接の御指導や声掛けに舞い上がってしまったりと、私にとっては最高に有り難く、楽しい嬉しい経験となった昇段審査でした。「出来ない」が無限にあるから「出来た」という喜びもあって、下手でも、おばさんでも、いやいや、お婆ちゃんになっても楽しめる空手に夢中です。
最後にこの度の審査に至るまでの過程で私を支えて下さったすべての方々のお名前を挙げて感謝の意を申し上げたいのですが、とても書ききれません。ですが、中里師範にだけは今一度、本当に本当にありがとうございました。これからも一生懸命稽古に励みますのでよろしくお願い致します。押忍。