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拳魂歌心!惻隠の心を養いなさい。

 今回は高見空手 道場訓 第一条でお馴染み「惻隠の心」にまつわるショートコラムです。

 先日、高見空手ホームページで道場訓を読まれた極真時代の古い先輩からお電話を頂き、興味深いお話を聞きました。

 それは今から20年くらい前、先輩が所属する営業部に配属されてきた後輩のM君の教育を任され、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で指導された時のエピソードです。

 M君が仕事でミスをして先輩がご指導される時、毎回、何故かM君の目つきが悪くなり、言葉が心の壁にブロックされて指導内容が理解されなかったそうです。お説教が頭と心に入って行かない。何かおかしい…?

 そしてある日のこと、二人で居酒屋に飲みに行った時に原因が判明しました。M君は、学生時代に中国武術を習っていたそうで先生から

「上司に怒られても負けないよう、上司を小さく、自分が圧倒的に大きくなるよう強くイメージしなさい!」

と、教わっていたそうです。これを聞いた先輩は、

「なんだ、その妖しい想念術は? そんなことしてたら仕事が修得できないじゃないか。自分の何が至らないのか、何が足りないのか受け取らないと。勝ち負けじゃなく学ぶことが大切だろ?」

と叱ります。更にM君は、中国武術の先生から

「憎しみを持ち、相手が無残に倒されて苦しむ姿をイメージしなさい。」
「(人の心を棄てて)ヘビや虎、猛獣になり切って相手を襲いなさい。」

と指導され、稽古してきたそうです。

これを聞いた先輩は絶句し、

「相手の不幸を強くイメージするなんて…。それって呪いじゃん。どおりで目つきが悪くなるハズだ。そんなの本当の強さじゃない。それに人を呪わば穴二つ。お前、本当に不幸になってしまうぞ!」

「万物の霊長である人間が心を棄てて、動物に成り下がってどうする?」

と、酔いに任せて徹底的にお説教。

「大学時代、俺が習っていた極真は、稽古も試合も礼に始まり礼に終わる。試合の相手も競うことでお互い心技を磨き合う敬意すべき存在。お前の習った中国武術の何処に‘徳’があるんだ?‘道’があるんだ?」

「妖しい技や想念術なんぞに心を囚われると、まっとうな社会人になれんぞ!」

アルコールの勢いにまかせた先輩の怒涛のお説教によって、M君は目からウロコが落ち、居酒屋を出る頃には悪い憑きものが取れたかのように顔つきも穏やかに変わって明るくなり、心の壁もなくなって言葉が通るようになったそうです。

先輩、グッドジョブ です、押忍!!

そして先輩は私に、

「俺、大学卒業して30年以上も空手を離れてるけど…、高見空手の道場訓ってカッコいいよね。孟子の哲学は武士道に大きく影響してるし、やっぱ人徳を磨いて立派になるのが今の武道を習う目的だよ。武から入り徳に至る、日本武道はこうでなくっちゃ。怪しい中国武術の世界なんかに足を踏み入れちゃいかんわ!」

と仰られていました。

ありがとうございます、押忍!

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日本武道は、正法に不思議なし!

 先輩のお話を聞いた時、私は、

 これが「武術」と「武道」の違いだ。妖しい武術は「敵に対する惻隠の情;剣魂歌心」という日本武道・武士道精神、大和魂とは相容れない。「武徳の涵養」「徳に至る道」が日本武道空手道だ!

と、改めて思った次第です。

 世の中には常識と良識のある善良な武術の先生がいらっしゃる一方、相手の不幸を強くイメージさせたり、妖しげな能力をひけらかしたり、人の心を放棄するよう指導する輩がいるのが残念で、私は怒りを禁じ得ません。このような人物の指導を受ける子どもたちが不憫でかわいそうです。

 高見空手では、門下生に道場訓よろしく『優しさや思いやり、惻隠の心を養うのが空手道』『武から入り徳に至るのが空手道』と、折あるごとに指導させて頂き、私自身も日々鍛練と道場生と共に稽古で汗を流し修行しております。

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 日本武道は『正法に不思議なし』です。

 子どもに武道教育を検討されている皆さまには、妖しい技や摩訶不思議な技、人の道から外れた想念法などに興味を抱いたり惑わされたりすることなく、「術」でなく「道」を、常識と良識、社会性のある流派や先生を選んで頂きますようお願いします。惻隠の心を養うこと、武徳の涵養こそが武道ですから!

一に曰く、
惻隠の心は仁の端なり 拳魂歌心を宗とせよ
高見彰、押忍!

次回コラムは、大和魂をテーマに、山中鹿介の『武』について述べたいと思います。
お楽しみに。

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